Krakakoaが挑む食料生産システムの歪

こんちには。チームOZかずまです。 

 研修や農具提供などでカカオ農家をサポートし、生産されたカカオ豆から高品質なチョコレートを作るインドネシア発の新進気鋭の会社、「Krakakoa(クラカコア)」。今回、CEOのサブリナ(本名:Sabrina Mustopo Dan Perjalanannya Mencipta Rasa)に、会社を立ち上げた思い、事業を通じて取り組もうとしている課題について語って頂きました。


Krakakoaを立ち上げたきっかけ

 私はインドネシアで生まれて、シンガポールで育ちました。父がインドネシアでコーヒー等を育てていましたので、良く行き来していたのですが、帰省の度に車の中から同年代の子どもが物乞いをしている姿を見て、「生まれた家が違うだけなのに、この差は何なのだろう」と疑問に思っていました。罪悪感は感じなかったですが、持つ側として生まれた責任は感じましたね。

 大学で国際農業開発を専攻し、子どもの頃に感じた差が食料生産システムの問題だと気付きました。生産者は搾取され、貧困から抜け出せない。更に収穫量を増やすため多量の殺虫剤を使ったり、焼畑を繰り返し自然を破壊する。先進国ではフードロスが問題になる一方、途上国では人々が飢餓で苦しんでいる。幸せを生み出すはずの食料生産のシステムがうまく機能していないため、様々な弊害を発生させていると感じました。

 卒業後マッキンゼーで働いていた時、インドネシアのカカオについてレポートを書きました。その時にインドネシアのカカオやカカオ農家の現状を知って、誰もやらないなら私がやるしかないと思いました。


インドネシアのカカオの状態

 創業当時、インドネシアのカカオ産業は問題だらけでした。カカオは繊細な植物で病気に弱く、栽培には正しい知識・技術と根気が必要です。ですが、カカオ農家たちは貧しくそのような教育を受ける余裕も機会もありませんでした。また美味しいチョコレートを作るためにはカカオを収穫した後、発酵という工程が必要です。発酵には通常1週間ほど必要なのですが、カカオの需要が多すぎたためか、未発酵の状態でカカオ農家から引き渡される事が通例となっていました。発酵しても未発酵のカカオと変わらない値段で引き取られるため、一日でも早く収入が必要なカカオ農家たちは、安い値段でカカオを売ってしまい、生活が向上しないという悪循環に陥っていたのです。

 実はインドネシアは世界第三位のカカオ生産国なのですが、上記ような理由からインドネシアのカカオは高品質なチョコレートの製造には使われていませんでした。課題がたくさんありましたが、インドネシアで高品質なカカオを栽培し、国内でチョコレートまで加工できれば社会に大きなインパクトを与えることができると感じました。


Krakakoaの対する取り組み

 私たちは、カカオ農家に教育を提供するところから始めました。まず、高品質カカオを安定して生産できるように、カカオ農園の管理方法、病気の対処方法から発酵の方法まで伝えます。そして研修の最後には、カカオの生産で使う農具を提供します。

 次に生産されたカカオを通常の買い取り価格の最大3倍で購入します。買い取ったカカオはスマトラ島にある自社工場でチョコレートに加工します。つまり、チョコレートの製造に関わる全行程をKrakakoaが行うのです。この統合モデルによって、サプライチェーンの無駄を取り除き、既存の食料生産システムに存在する弊害を取り除きました。

 このモデルによって、カカオ農家は持続可能な方法でカカオを生産し、十分な収入を安定的に得ることが出来ます。生産国で加工することで、雇用を生み出し、国の経済にも貢献することが出来ます。カカオ農家から直接買い取っているため、フェアな価格で消費者に届けることもできます。

 温暖化や貧困など規模の大きな問題に対して、Krakakoaが単体で解決することは困難です。しかし、問題の一端に取り組み、モデルを示すことで世界に良い影響を与えることができると信じています。


Krakakoaの今後の展望

 短期の目標は、チャーリーとチョコレート工場のような場所を作ることです。そこで私たちが直面している問題とKrakakoaの取り組みを伝えたいと思います。人々の心に共鳴し彼らの心持を変えるような、そんな場所を考えています。人間は論理的に物事を考えることが出来ますが、人々を動かすのはいつも感情に訴えかけるものです。

 長期の目標は、ビジネスを成功させ我々の取り組みをモデルとするような会社が他にも出てくることです。お金の為ではなく、本気で社会問題を解決することを使命に掲げる会社が増えれば、大きな課題も解決できると思います。


インタビューを通して、サブリナのカカオ農家への想い、社会問題に対する情熱が伝わってきました。大きな問題の全体を見て圧倒されるのではなく、切り口を変え取り組める部分を探し、そこに全力を費やすというサブリナの生き方は非常に学ぶものがありました。


・Interviewee:Sabrina Mustopo 

Krakakoaの共同創設者兼CEO。インドネシア産まれ、シンガポール育ち。Cornell大学卒業後、Mckinsey & Companyで経済・農業開発に関わる。2013年にKakoaを創業。2016年にKrakakoaに改名。2020年に向け、現在の生産容量を3倍まで増やし、さらなる事業拡大を計画中。


Krakakoa JP's Ownd

~Krakakoaのチョコレートが好きな6人組が運営するブログ~

0コメント

  • 1000 / 1000